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2008年10月の記事一覧

ネーミング批評(1) 省略から生れた美しい言葉「ジバンシー」
…個性とエレガンスを追ったブランド名
ネーミング批評(2) 銀行ムードが感じられない
「三菱東京UFJ」
ネーミングの極意 ポイント数の「高い、低い」をどう読むか
  「たそがれ」という語はなぜ美しいのか
  ネーミングの「分析・評価」を行います。
  人の性格は、名前の音で決まります
  音相理論の集大成版
「日本語の音相」をお分けします。

≪ネーミング批評(1)≫ 

省略から生れた美しい言葉「ジバンシー」
・・・個性とエレガンスを追ったブランド名

幼少期を先祖譲りの美術品の中で過ごした貴族出のユベルト・ジバンシーは、優れたデザイナーの下で修行したあと、パリでオートクチュール・メゾンを開きました。

このような背景から生まれたブランド名「ジバンシイ」のコンセプトは「エレガンスと強い個性」です。

それをこの語がどのようなイメージで表現しているかを見てみようと、音相分析してみました。

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ジバンシー

表情解析欄のトップにある「個性的(K)」と「シンプル感(A)」が響きあって個性が強く表現され、それに続く「暖かさ(P)」、「安定感(Q)」、「優雅さ、高尚さ(S)」、「高級感(R) 」がエレガント感を伝えてきます。

このように、表情語の上部を見るだけで、コンセプトを極めて明白に捉えた語であることがわかります。

また、そのようなイメージを特記事項欄の「鋭角的(冷たさ、厳しさ)」と、情緒解析欄の「孤高感」、「純粋性」、「寂しさ」がさらに具体的に捉えています。

この語の優れたところは「エレガントさと個性の強さ」だけに絞って、ブラ ンド名でよく使われる「爽やかさ、清らかさ(N)」、「現代感(H)」、「軽快感(F)」などを一切表現していないことです。これらをあえて切り捨てたことで、表現したいポイントが一段強く輝いているのです。

このようなイメージがこの語のどこから生まれたのか。

それは、有効音相基欄が次ぎのように示しています。

・個性の強さ ・・・ 「イ音多用」と「高勁輝拍多用」の響き合い。
・エレガント感 ・・・ 「濁音多用」、「有声音多用」および「高勁輝拍多用」の響き合い。
(注) 高勁輝拍とは、B(明るさまたは暗さ)とH(強さ)のポイント数の絶対値がどちらも0.8以上の拍をいいます。
高勁輝拍が多く入ると、語全体のインパクトを高めます。

≪ネーミング批評(2)≫ 

銀行ムードが感じられない
「三菱東京UFJ」

三行の合併で生まれた名前です。

このような動機でできた社名の場合は音に対する配慮なしで作られるものが多いため、音相を分析しても明白な方向性のない散漫なイメージの語が多いのですが、この語の場合は表情解析欄の高位の部分に「高級感、充実感(R)」、「静的、非活性的(T)」、「安定感、信頼感(Q)」、「高尚さ、優雅さ(S)」が並ぶため、高級、優雅な情緒性の強い語になっています。

また、銀行名に表現すべき「合理性(H)」、「現代感(H)」、「庶民性(M)」などがみなゼロ・ポイントのため、銀行というイメージがこの語から湧いてこないのです。

多くの人が、この語に対し内心で親近感を感じていない理由の1つがこの音相的な矛盾にあるように思うのです。

この語が、そんなイメージになったのは、庶民性や銀行らしい存在感をつ くるのに欠かせない破裂音系の音素の使用が極めて少ないこと(14拍中4拍)と、有効音相基欄が示しているように極端な多拍(注1)と、逆接拍(注2)の多用(14拍中6拍…42%)に原因があるのです。

(注1) 多拍とは…音節(拍)の数が多い語(7拍以上)をいいます。多拍になると語に優雅感、高級感、情緒感などが生まれます。
(注2) 逆接拍とは…子音と母音の明るさがプラス(明)とマイナス(暗)の反対方向を向く拍(音節)をいいます。逆接拍を多用すると語に奥行き感や優雅感が生まれますが、この語ではそれが14拍中6拍(43%・・・標準は23%)もあるのです。

≪ネーミングの極意・シリーズ≫ 

ポイント数の「高い、低い」をどう読むか

表情解析欄に出ている40の表情語は、ポジティブ(肯定的)なことばで表示され、否定的(ネガティブ)な意味を持つ語はみられません。

その理由は、ポジティブな意味の中にはネガティブな意味も含まれているからです。

すなわち、「明るい」という表情語には、明るい意味を持つ「楽しい、うれしい、かがやか」などの語のほかに、その反対方向にある「暗い、悲しい、寂しい」などの語も含まれます。

そのため、表示されているポイントの数は「明るい」部分と「暗い」部分を相殺した「差」の部分が出ているのです。

すなわち、ポイント数が高いということは、反対イメージが少なく、その表情を明白に持っていることを示しますが、ポイント数が高すぎると、単純で奥行き感のない語になるのです。

また、最高位にある表情語のポイント数が低い(ほぼ50以下)語は、反対方向の表情の影響を強く受けている語ですから、複雑で奥行き感のある語になるのです。

「たそがれ」という語はなぜ美しいのか

「たそがれ」は「誰そ彼(かれ)」(あの人は誰?)から生まれたことばですが、陽が落ちた薄暮の風情を、それにふさわしい音を使って表現している、音相的にも大変すぐれたことばです。

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ジバンシー

表情語欄をみると、上位の部分に「高級感、充実感、非活性感、暖かさ、安らぎ、安定感、高尚さ」がありますが、これらはみな優雅さや情緒感を表すうえでなくてならない表情語だし、その中の「シンプル感」がそれらの純粋さを強調する働きをしています。

また、「情緒欄」では「人肌の温もり感、哀感、寂しさ、孤独感」などで人の生(よ)に思いをよせながら、「古典的、神秘的、不可思議感」などが悠久への思いを伝えています。

これほど多くのイメージが、わずか4拍語のどこから生れてくるのでしょうか。

1つは表情語の最高ポイント数を25.0と極めて低く抑えたことがあげられます。最高ポイント数を低目に抑えると、「現実」の上にベールをかけたような奥ゆかしさや神秘感、悠久感など、2次元的な世界が表現されるのです。

また今1つの根拠として、「そ(so)」音の逆接拍効果があげられます。

この逆接拍の1音で、「高級感、情緒感、神秘感」などの深みがさらに一段増しているのです。

ネーミングの「分析・評価」を行います。

音相システム研究所では、「ネーミング批評」欄にあるようなネーミングの分析と評価を行なっています。

分析評価には次の種類があります。

(1) 個別評価 ・・・ このサイトの「ネーミング批評」欄にあるような、1語ごとの細密な分析と、その根拠の説明や対応策などを述べるもの。
(2) 総合評価 ・・・ 懸賞募集などで集めた大量のネーミング案から優良案を短時間で取り出すもの。クライアントからいただいた商品コンセプトをコンピューターに入力し、それに大量案を入力して個々の案のコンセプト達成率を捉えたうえ、高点のいくつかの案を(1)の「個別評価」で細密分析して優良作を提案するものです。
音相分析と評価の料金表
(1) 個別評価(本評価)
  1語(1分析) 30,000円
(2) ラフ評価
・ラフ分析料 50語まで 1語 2,000円
  100語まで 1語 1,800円
  1,000語まで 1語 1,200円
  1,000語以上 1語 800円
・コンセプト調整費     70,000円
・本評価料   1語 30,000円
(注) 「ラフ評価」は総語数20語以上で、本評価語数5語以上の場合に行ないます。

人の性格は、名前の音で決まります

ことばは「意味」のほか、「イメージ」を伝える働きもしています。

「けんいち(健一)」という音を聞くと、誰もが活動的な子をイメージし、「みさき(美咲)」という音を聞くと明るく活発な子を想像します。

健一君、美咲ちゃんと同じ名前で毎日呼ばれて育つうち、それぞれの名前の音が持つイメージがその子自身のイメージとなり、表情となり、それが性格へと入ってゆくのは極めて自然な現象といえましょう。

人の性格はその後の環境などで種々のものが加わりますが、幼少の頃身につけたものは基本的性格となって、ほとんど変わることなく心の奥に止まり続けるのです。

そのため、大成した政治家の名前を分析すると、「活性感がある」、「社交的」、「明るい性格」などの表情語がほぼ例外なく高ポイントで出ますし、芸能人の名前を分析すると「派手」、「社交的」、「個性的」などに高点の出る人が多いのです。

名前の音は一生の方向を決めますから、生まれてくる子を「健康で社交的な性格の子になってほしい」と思われたら、そういうイメージを持つ音で名前をつけてあげねばならないのです。

赤ちゃんの名づけのとき、字画などで運勢面を調べることも大事ですが、幸せになる性格の名前を考えたあげることは、この上ないご両親からの「プレゼント」だと思うのです。

当研究所ではそのお手伝いをしています。

(詳細は8月2号をご参照ください)

音相理論の集大成版
「日本語の音相」をお分けします。

「日本語の音相」(木通隆行著、小学館スクウェア刊、)はすでに絶版になっていますが、当研究所に余部があるのでご希望の方へお分けします。
本書の内容はこちら

郵便番号、住所、氏名、電話番号、冊数、配達希望時間などをご連絡
こちら)いただけば郵便小包でお送りします。(定価3.800円)

【読者の感想】

●詩歌の音楽性を明らかにした画期的快著

日本の伝統的詩歌において不毛だった音楽性の重要さを解明された画期的な研究です。俳句の実作者としても、深く琴線に触れるものがありました。

短歌や俳句の音韻面については、折口信夫の『言語情調論』などはあってもまだ不十分で、「調べ」という曖昧な概念から抜け出ておりません。先生の「音相理論」はそれを闡明されたものと考えます。

「俳句スクエア」代表、五島篁風 (医師)

●音相という素晴らしい世界を知りました

「日本語の音相」、深い感動をもって読みました。

音相を知らずに日本語の鑑賞や評論などできないことをしみじみ知りました。目の覚めるような感動でした。

(富山、日本語研究グループ hirai)

ネーミングの分析・評価を行います