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2009年12月の記事一覧

第1号

ネーミング批評 「美肌」のザラザラ感、「美白」の清潔感
・・・人に伝わるイメージの違い
ネーミングの極意(1) 音相論と言霊(ことだま)の関係について
ネーミングの極意(2) 音相分析の精度を見る

第2号

ネーミング批評 毛髪クリニック「リーブ21」
・・・イメージを絞ることで得た効果
ネーミングの極意(1) 有声音の多い日本語
ネーミングの極意(2) ネーミングにとって、音はなぜ大切なのか
  音相システム研究所が行なっている事業
  ネーミングの分析・評価を行います
  「広告コンペに強い」企画書作り
・・・音相分析で生まれるユニークなアイデア
  「コンサルタント」の実例
・・・ことばの「あらゆる悩みと疑問」にお答えします
  ストック商標の再チェックを!
・・・経費節減で見落とされているもの
  音相理論の集大成書
「日本語の音相」および「ネーミングの極意」
をお分けします。

≪ネーミング批評≫ 

「美肌」のザラザラ感、「美白」の清潔感
・・・人に伝わるイメージの違い

「美肌」という語は、女性の肌や色香を思わせる美しい意味と文字とを持っています。

だがそういう優れた意味を持ちながら、この語が商品名に使ってヒットしたという記録はないし、このことばをテレビなどで聞いたこともありません。

そのわけは、この語には、現代人にとって何より大事に思っている「音の魅力」がないからです。 そういえば、ある著名な言語学者がこの語のことを「聞いただけで、肌がざらざらになりそうなことば」と言っていたのを思い出します。 この語は字面の上で美的なものを持ちながら、音が伝えるイメージには肌がざらざらになるような「醜」の面があるのです。 ネーミングに見られる意味や文字は、何時の時代も大きな働きをしています。
意味や文字が、その商品への好印象を作ったり、それが記憶の助けにもなることもありますが、音響感覚が発達している現代人は、意味や文字がどんなに良くても音が伝えるイメージが悪ければ、ネーミングとしての評価は格段に下がってしまうのです。

最近この語の代わりに「美白(びはく)」という語が使われています。 この語と「びはだ」のイメージの違いを音相分析で見てみました。

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びはだ
びはく
(注) 青い棒グラフの読み方
濃い青 ・・・ 「活力感、若さ、シンプル感、現代感」など、明るさや活性感などプラス方向を向く表情語
淡い青 ・・・ 「高級、優雅、落ち着き、安定感」など、静的または非活性的なマイナス方向の表情語
中間色 ・・・ プラス、マイナスどちらにも機能する表情語を示します。

表情解析欄の上位を見ると、どちらの語にも「充実感」「暖かさ」「優雅さ」など美しさを作る表情語が高点にでていますが、美肌の表現になくてならない表情語「清らかさ、爽やかさ」を「びはく」はトップに立てているが、「びはだ」の方はゼロポイントです。

また、美的イメージを裏付ける「複雑度」が美白の4(非常に複雑)に対し美肌は1(単純、平凡)しかありません。

このようなイメージの違いが人気の違いとなっているのです。
だが、「美肌」はポスターや印刷物などに使うのであれば、字面だけの勝負となるのでそれなりの効果は期待できると思います。

≪ネーミングの極意(1)≫ 

音相論と言霊(ことだま)の関係について

ことばが伝えるイメージには感覚的なものが含まれるため学問の対象になりませんが、人と人が話しあうトークの場では、まことに大き名働きをしているのです。

日本語には古くから「言霊(ことだま)」ということばがあります。
言霊とは、人の発することばには、時空を超えて祈りや思いを伝える霊的なパワーがあるというもので、藁人形への呪いの釘打ちなどがよく例にあがります。

この語が文字で現われたのは、柿本人麿と山上憶良の万葉歌(760年頃)が始まりといわれていますが、国学が盛んになった江戸期には賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤、橘守部などの著作の中で多く見られるようになり、今日でもことばの働きを語るときなどによく聞かれることばです。

ことばに霊力を持つという考えは、キリスト教の「太初(はじめ)にLogos(ことば)あり、ことばは神なり」(マタイ伝)のほか、仏教やコーランをなど多くの宗教にもあるようです。

宗教は「ことば」によって成り立つため、「ことば」の深みを追ってゆくと、音が伝えるイメージの世界、すなわち音相の世界へと繋がるのです。 言霊が現実の言語生活の中でどんな働きをしているかを捕らえる研究杷どこにもないし、それを語っても抽象的な神学論のようなもので終ってしまいます。

宗教をもたず、その知識もない私ですが、ことばのイメージである音相を分析していると、音が伝える霊力のようなものを割合具体的に感じることが多いのです。

例えば、「南無阿弥陀仏」、「南妙法蓮華経」、「アーメン」など「祈りのことば」を分析すると、どの語にも宗教が持つ崇高で神秘的な音相基でできているのがわかるのです。

紙数の都合で分析表は省略しますが、これらの五は次表で見られるように表情解析欄に神秘感や悠久感を作る「安定」、「信頼」「高級」、「優雅」などの表情語があるし、どの語にも情緒解析欄には「永遠性」、「孤高感」、「大らかさ」など、宗教的なオーラを強く感じる情緒語に高点が出るのです。

「祈りのことば」が伝えるイメージ(表情語)
「祈りのことば」が伝えるイメージ(情緒語)

またそれぞれの拍数(音の数)と音の構造(音相基)の違いから、南無妙法蓮華経は年配者を主な対象とし、南無阿弥陀仏とアーメンは万人向きを意図しているなど、絶対者と人との関わりの微妙な違いを見ることもできます。

それは祈りのことば(詞)だけでなく、般若心経、真言宗、浄土真宗、日蓮宗、宗洞宗、法華経や、寺院や高僧の名などを分析しても同じ傾向が出るのです。

これは伝道する宗教者と、その深奥を知ろうとする信者の間で生れる感覚ですが、現代人にもそれが時空を超え、同じ形で伝わってくる。
そのようなイメージが伝えるパワーこそ、「言霊」の原点ではないかと思うのです。

言霊を現世において経験した人はいないでしょうし、ことばをつかってそれを論じれば抽象的な神学論で終るほかありません。

常識的な目で見れば、言霊は空想や物語の中でのみ存在するとしか言えませんが、古代の人々が「そのようなもの」を感じていたからこそ、この概念やことばが生れ、長年語り継がれてもきたのです。

古代の人が感じた「そのようなもの」とは何か。それは、古代人の間にも無意識的に存在していた音相感覚というイメージではないかと思うのです。

人と交わすことばの中で、互いに通(かよ)う「イメージ」で思いや祈りが伝わる事実から、「言霊」の語は生れたのではないでしょうか。音相と言霊は、深いところで結ばれているように思うのです。

≪ネーミングの極意(2)≫ 

音相分析の精度を見る

ことばからイメージを取り出すコンピュータ・ソフトは、平成6年(1994年、)当研究所が株式会社ダイスの協力で開発したもので、Onsonic vo1およびOnsonic Ⅱの2つのシステムがあります。

Vo1ソフトはことばのイメージを細密分析して取出すもので、ある語を入力すると、その語の音がどんなイメージを伝えているかを捉えます。 当研究所では、このソフトを使って企業などから依頼の2800語以上のネーミングや多数の古語、現代語、外国語などを分析してきました。

例えば、「家庭的雰囲気の中に優雅さや気品のある中型乗用車」というコンセプトを持つ車の名前を選ぶとき、それらをコンピューターに記憶させたうえ、用意してある数百数千のネーミング案を続けて入力して、個々のコンセプト達成度を数字によって取出すものです。

先日、音相を学びたいという学生が研究所を訪ねてこられた時、私は次のことを質問をしました。「あなたは『蛍』という語に、どんなイメージを持ちますか」。彼はしばらく考えたあと「清楚で、穏やかで、情緒的で、この世のものと思えない不思議な虫ですかね・・」
そこで、この語をコンピューター(OnsonicⅠ)に入力し、とりだされた分析表をお見せしながら次のことをお話ししました。

びはく

「あなたが捉えた4点は、分析表でも高いポイントで捉えていますが、分析表はあなたが気づかなかった次のものも取り出しています。

表情解析欄では→①非活性的、②暖か、③清潔感、④軽やかさ。
情緒解析欄では→⑤曖昧感、⑥ためらい感、⑦クラシック、⑧神秘的、⑨哀感、⑩鄙びた感じ、⑪純粋さ、⑫素直さ、⑬夢幻的、⑭普通でない感じ、⑮孤立感、⑯寂しさ
など、合計16もあります。コンピューターはあなたが考えられた4倍ものイメージを捉えているのです。音相分析は、語が持つイメージをこのような奥行きと幅の広さで捉えますから、音相分析をすると、このような思いがけない表情や情緒まで取出すことができるのです」と。

2009年12月第2号

≪ネーミング批評(1)≫ 

毛髪クリニック「リーブ21」の清潔感
・・・イメージを絞ることで得た効果

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リーブ21
リーブ21
リーブ21

分析表をみると、表情語の上位に「個性的(K)」と「シンプル感(A)」が並び、それに続く「安らぎ(P)、高級感(R)、静的(T)、優雅さ(S)が高級、優雅な雰囲気を作っています。

毛髪商品のネーミングには、このほかに効果的なコンセプトとして「進歩的(B)、新奇さ(C)、軽快感(F)、現代的(H)、合理的(J)、爽やかさ(N)、庶民的(M))などがありますが、それらにあえてこだわらず「個性的」と「高級優雅感」に絞ったところに成功のあとが見られます。

人の心に留まる印象深いネーミングを作るには、訴えたいコンセプトの中からどれを訴えるかの戦略を立てる過程が重要ですが、コンセプトを増やせば増やすほどイメージのぼやけたものになり、減らせば減らすほど残ったコンセプトのアピール度は高まるのです。

この語の良さは、まずコンセプトの選択の思い切りの適切さにあったといえるのです。
この語の第2の良さは、表情語のポイント数を最高64.3と低めに抑えて語に奥行や厚みを作ったことです。 ポイント数を低めにすると、どんな効果が生まれるのかを簡記してみましょう。

表情語はすべてポジティブなことばを使っていますが、表情語には同じ系統のネガティブな概念も含みます。
「明るい」という表情語には「暗さ」の概念も含むから、表情語欄にでている数字はその語が持つ「正」(明るい)と「負」(暗い)のポイント数との「差」の部分が出ているのです。

すなわち、ポイント数の高い表情語は、反対方向のイメージが弱いから、「単純で奥行きや厚みのない表情」となり、反対にポイント数が低い表情語は正と負の両面をどちらも多く持つ複雑なイメージを持つ語だといえるのです。

「リーブ21」は、個性と高級優雅感を訴えながら、それを控えめに表現する奥ゆかしさをもつご語だといえるのです。

≪ネーミングの極意(1)≫ 

有声音の多い日本語

日本語の音韻的な特徴の一つに、有声音の使用が多いことがあげられます。

音声には声帯をほとんど振動させずに出す無声音と、振動させて出す有声音があります。
声帯を振動させずに出す無声音には、パ・タ・カ行(破裂音系)音と、サ・ハ行音(摩擦音)があり、これら以外のすべての音は有声音となります。 無声音は、「現代的、健康的、軽快感、明るさ、スピード感、爽やかさ」など、「陽」(プラス)のイメージをもつ語に多く使われます。
   ・無声音の多い語の例
ハキハキ、ピカピカ、スポーツ、テクテク、快適、きっぱり、厳しい、爆発、活発、溌剌・・・。

次に有声音とは接近音(ヤ、ワ行音)、鼻音(マ、ナ行音)、流音(ラ行音)のほか母音やすべての濁音の子音部分をいいます。 有声音は「優雅、落ち着き、穏やかさ、豪華、奥行き感、暖かさ」のほか、「暗さ、寂しさ」など「静」または「陰」の表情(イメージ)を持つ語に多く使われます。
   ・有声音の多い語の例
ダイヤモンド、ゴージャス、美人、みやび、銀座、祇園、ほんのり、穏やか、平凡、やすらぎ・・・。

日本語にはアイウエオ、カキクケコなど138の拍〈音の単位〉がありますが、一般につかわれている語の53パーセントがマイナスのイメージをつたえる有声音でできています。
日本語は外国語に比べ「穏やかなことば」だと言われるのは、有声音の子音の使用が多いことと、拍の終わりに母音(有声音)が必ずつくのが、大きな理由だといえるのです。

有声音と無声音を区別するには、両耳を指でふさいで「声を出し、指先に振動が指に伝わるのが有声音、伝わらないのが無声音です。「ターター」と発声して、子音「t(無声音)」を発音するときは振動が伝わらないが、母音「a(有声音)」に移ると振動が伝わるのがわかります。

バブルがはじけて暗い時代に入ったころ、「ガングロ」という語が流行りました。顔を黄土色、目や唇を白で塗った異様なメークは、その自己表現の奇抜さからこの語は瞬く間に全国に広がりましたが、このネーミングの絶妙のうまさに私は感心するのです。
 「がんぐろ」という音を分析してみましょう。

この語は有声音ばかりでできた語だし、濁音が2音もある上、暗く重たいオ、ウ音が入った息づまるほど鬱陶しいことばですが、そういう中に「ガ」の「a」の1音が不思議な明るさを伝えているのです。
「ア」という母音の音相をみてみましょう。
アは明るい意味の語に多く使われますが、この音はどのような環境にもアダプトできる「無個性的でニュートラルなイメージ」の音相をもっています。そのため、「あけっぴろげ、あっけらかん、あからさま、あいまい、あさはか、あけすけ、あっぱっぱ、ふらふら、へらへら」など、こだわりなさや無責任さを表す語にも多く使われる音なのです。

「ガングロ」の「ガ」に含まれるアの1音が、何事にもこだわりのなく生きる若者たちの心性を見事に表現しているのがわかるのです。
そこに「ゲングロ」でも「ゴングロ」でも表現できない「がんぐろ」のメッセージがあるのです。
この語が人々にあれほど愛されて流行ったのは、多くの人がこの語に底流している不思議な音相のパワーを感じていたからではないでしょうか。
そこに、現代語の中に息づく「言霊」の影を私は見るのです。

≪ネーミングの極意(2)≫ 

ネーミングにとって、音はなぜ大切なのか

人々のことばの音に対する感覚は、近年見違えるほど高まりました。 それは今流行っている流行語「カッコいい、しらける、超、即、激辛、フェラガモ、シャネル・・・」などの音相を分析してみれば明らかです。
また、音相のすぐれたことばやネーミングは、メディアの力を借りてアッという間に全国に広がるし、「地デヂ、きもい、美肌、アンチ・エージェング」のように音の響きの良くない語は、メディアがどんなに取り上げても好んで口にする人はおりません。

 

ネーミングの制作に当たっては、現代人のこのようなことば感覚のレベルの高さを忘れてはならないのです。
これまでのネーミングは、意味的なものを中心に行なわれていましたが、大衆の音相感覚が発達した現在では、意味への工夫や配慮がどれぼどあっても、音が伝えるイメージのよくないものはほとんど評価がされないのです。

だがネーミングの制作現場では、音についての取り組みは、まだまったく行なわれておらず、ネーミングの送り手である企業の側は昔ながらに意味的な内容や字形が中心で制作され、受け手である「大衆」は音のイメージの良し悪しでネーミングの良し悪しを決めているのです。基本的なこのすれ違いが、多額の費用をかけながらヒット・ネーミングの生まれない大きな原因になっているのです。

音相システム研究所が行なっている事業

当研究所では、次の事業を行なっています。

1. ことばの科学が対照にしてこなかった「現用されていることば」(商品等のネーミングを含む)に含まれるイメージ(表情)を、客観的な根拠によって解析し、評価を行う種々のプロジェクト。
2. 詩、俳句、小説など文芸作品に含まれるキーワード(主要語彙、フレーズ)などの音相を分析し、作者の創作意図や心性などを解析するプロジェクト。
3. 学術用語、業界用語、俗語、外来語その他、あらゆることばが伝える「イメージ」に関する調査および論評、提案等のプロジェクト。
4. 企業等が保有している大量のストック商標や、懸賞募集などで集めた大量の未発表案から商品コンセプトにふさわしい語を、科学的根拠をもとに抽出するプロジェクト。
5. 姓名の音相を分析して基本性格等を解析するほか、新生児に期待したい性格を入力してコンセプトにかなった名前を推薦する等のプロジェクト。
6. その他、ことばが伝えるイメージに関する分析、論評およびコンサルティング。

ネーミングの「分析・評価」を行います。

本号、トップの「ネーミング批評」欄などで見られるように、音相理論を使ってことばのイメージを分析すると、個人の感覚や知識では到底捉えられないようなものまで取出しますが、当研究所では次のような分析評価をおこなっています。

(1) 個別評価 ・・・  ネーミングやネーミング案について、「ネーミング批評」欄にあるような細密分析と評価を行なうもの。
(2) ラフ評価 ・・・  大量のネーミング案の中から優良案を短時間で取り出すもの。
 その商品名で表現したいコンセプトをあらかじめコンピューターに入力し、それに大量案を入力して、個々の案のコンセプトの表現度を捉えたうえ、有望案のいくつかを前記の「個別評価」で細密分析して最優良案を推薦するもの。
音相分析と評価の料金表(消費税別)
(1) 個別評価(本評価)
  1語(1分析) 30,000円
(2) ラフ評価
(注) 「ラフ評価」は総語数20語以上で、本評価語数3語以上の場合に行ないます。
・ラフ分析料 50語まで 1語 2,000円
  100語まで 1語 1,800円
  1,000語まで 1語 1,200円
  1,000語以上 1語 800円
・コンセプト調整費     70,000円
・本評価料   1語 30,000円
(3) その他
作業内容等により、コンサルタント料、特別調査費等を申しうける場合があります。

「広告コンペに強い」企画書作り
・・・音相分析で生まれるユニークなアイデア

CM用のテレビ映像や、ネーミングの制作コンペなどの参加される際の企画書に音相的な発想を取り入れると、具体的でユニークな提案が可能になります。

当研究所では種々のコンペの企画書作りのお手伝いをしていますが、独創的な着想による提案が高く評価され、大手代理店が参加するコンペでもトップ採用を頂くことが大変多いのです。

企画料・・・20万円。(ただし当所で提案した企画書がコンペの選に洩れたときは企画料はいただきません。

音相論的な発想から生まれたコンペ用の企画として、次のようなものがあります。

1. テレビCM用映像を制作するコンペの場合

CM画像に出てくる社名や商品名などのキーワードを音相分析し、その語が伝えるなイメージを捉えたうえ、それとの関係から生れるイメージをもとにした映像企画を提案します。

2. ネーミングの制作コンペの場合

大衆はことばの音に対し高い感性を持っていますが、その実態を具体的に捉えた学問はありません。そのためネーミングの専門家でも、音についての評価は個人のカンでしか行なっていないのが現状です。

そのため、多額の費用や時間をかけてもヒット・ネーミングはなかなか生まれないのです。

音相理論を使ったイメージ解析は、別紙の分析と評価例に見られるように、個人の主観を排除した科学的根拠を使って最優良案を選びます。

それが感覚的にも理論的にも他社とは異なる、優れた作品が提案できるのです。

3. 大量のネーミング案から優良作を取り出すコンペの
   場合

収集した大量のネーミング案の中から優良案を選ぶ作業は、これまですべて手作業で行われていますが、選ぶ人の主観や好みによってせっかくの優良作が捨てられてしまう例が多いのです。

当所では、クライアントから伺ったその商品のコンセプトをコンピューターに入力し、それに大量案を入力して個々の案のコンセプト表現度を捉え、上位のものをさらに細密分析して最優良作を推薦します。この方法を用いることで短期間で、客観性の極めて高いものがご提案できるのです。

コンサルタントの実例
・・・行動科学に応用できる音相理論

当所がお受けしているコンサルタントには、以上で上げたネーミングの制作や文芸作品の語彙などのほか、ことばにまつわる種々のものがあります。最近の例として次のものがありました。

○鉄道自殺を減らす新語はないか(大手鉄道事業社より)

鉄道自殺が発生するたび、鉄道会社は多大な被害を受けているそうですが、「自殺を考える人は真っ先に鉄道自殺を考える」という鉄道研究所の心理調査データがあるようです。

「その原因を作る1つに、駅などで行なうアナウンスに多く使われる「人身事故」という語の普及ぶりがあるようなので、この語に代わる新語を考えてもらいたい」というご相談でした。

当所では考えられる日本語の類義語や主要外国語を調査して音相分析を行いましたが、「人身事故という語が的確な意味と極めて優れた音相をもっているところから、たとえ新語を作っても、日本語からこの語を追放することはほとんど不可能でしょう」というレポートを提出しました。

○電話販売で成果を上げることばは何か?
  (某保険会社からの例 )

電話によるセールス(テレマーケティング)を行っているある大手生命保険会社からのものですが、「取扱者に十分な指導訓練を行っても勧誘成績の高い人と低い人と上がらない人がいる。その原因がことばの音が伝えるイメージにあるのではないかと考えてお尋ねした」とのことでした。

この原因は取扱者の仕事に対する向合い方の違いにあるのではと考えた当所では、人の心性や感性面を捉えるのに有効な「音相基」(注)の使用分布を調べることにしました。

(注) 音相基とは破裂音、有声音、多拍、少拍、濁音など、ことばに表情を作る40種類の表情を作る音の単位をいいます。

成績優良者と、不良者30人づつの実録テープを分析して、そこで使われている音相基を捉えた結果、やはり大きな違いがあるのがわかりました。

即ち成績優良者は、硬いイメージを伝える破裂音系(パ行、タ行、カ行)の音 の入ったことばを多く使い、成績の上がらない人は、ソフト・ムードで穏やかに伝える摩擦音、流音、鼻音などが多いことがわかったのです。

この調査により、音相などに関心のない一般の人たちでも、音が伝えるイメ ージには機敏に反応し、それにより商品への信頼度を高めたり、「保険加入」という大きな決断までしていることが明らかになったのです。

その保険会社ではその後、この調査結果を元に取扱者の訓練や新規採用テスト要綱などを改正されたようでした。

ストック商標の再チェックを!
・・・経費節減で見落としているもの

バブルのころ、各企業では将来発売される商品のため、ネーミングを商標登録する施策が広く行われました。

その種のものがいま企業内でストック商標となって大量に保管され、商標権維持のため特許庁に毎年多額の更新料を支払っています。

商標登録の申請は、化粧品、薬品、衣料品、食品、電気製品、コンピューターなど45の「区分」ごとに行ないますから、無関係と思える区分にも同じ名称で申請するため、45区分の半分くらいの個所に申請する例も少なくありません。

認可をうけた商標は、10年ごとに一区分48,500円の更新料を支払いますから、100語を20区分に登録している会社では、10年ごとに9,700 万円(年平均970万円)の支出となります。

この費用は企業内で問題になりながら、ネーミングの価値を客観的に評価できる理論や技術がなかったため、やむなく支出をしていました。

だがストック商標の中で、将来使用に耐えるものがどれほどあるかが問題です。

当研究所が調査したところでは、保有をしても成果が期待できないものが三分の一以上あることが明らかになっています。

そこでこれら商標の、評価の見直しが必要となるのです。

「当社ではその種の調査は実施済み」とお思いかもしれませんが、真に有効なネーミングとして使えるかどうかを商品コンセプトとの関係で客観的に評価できる技術は「音相解析法」をおいてほかにありません。

未使用商標の実態(推測)とその活用例

この解析法はOnsonicソフトを用いて次の方法で行います。

ストック商標を商品コンセプトごとに分け、個々のコンセプトをコンピューターに記憶させたうえ、そのグループの商標名を入力して1語ごとのコンセプト表現度を数値によって取り出すものです。

分析した結果、その商品に適さないものは他の商品や他事業部へ回してヒット・ネーミングになった例がありますし、社内で利用できないものはそれなりの対価を得て社外へ譲渡することも可能です。

音相理論の集大成書
「日本語の音相」および、「ネーミングの極意」をお分けします。

「日本語の音相」(木通隆行著、小学館スクウェア刊、)および「ネーミングの極意」(同著、筑摩新書刊)はすでに絶版となっていますが、当研究所に余部がありますのでお分けします。本書の内容はこちら

郵便番号、住所、氏名、電話番号、冊数、誌名」をメールでご連絡(こちら)いただけば郵便でお送りします。

頒布価額(送料とも) ・・・ 「日本語の音相」 2,850円
  「ネーミングの極意」 1,000円

【読者の感想】

●詩歌の音楽性を明らかにした画期的快著

日本の伝統的詩歌において不毛だった音楽性の重要さを解明された画期的な研究です。俳句の実作者としても、深く琴線に触れるものがありました。

短歌や俳句の音韻面については、折口信夫の『言語情調論』などはあってもまだ不十分で、「調べ」という曖昧な概念から抜け出ておりません。先生の「音相理論」はそれを闡明されたものと考えます。

「俳句スクエア」代表、五島篁風 (医師)

●音相という素晴らしい世界を知りました

「日本語の音相」、深い感動をもって読みました。

音相を知らずに日本語の鑑賞や評論などできないことをしみじみ知りました。目の覚めるような感動でした。

(富山、日本語研究グループ hirai)

ネーミングの分析・評価を行います