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2009年5月の記事一覧

ネーミング批評(1) ペプシコーラ
・・・すぐれた音相感覚と、難音感の巧みな利用
ネーミング批評(2) TSUBAKI(ツバキ)資生堂
・・・華やぎが過ぎて情緒が消えた
ことば批評 俳句「花散て また閑かなり 園城寺」(鬼貫)
・・・音相分析が捉えた「響き」の真意
ことばの音相 イメージ(表情)はどんな方法で捉えたか
  音相システム研究所が行なっている業務
  「音相」の語源について
  ネーミングの分析・評価を行います
  音相理論の集大成書
「日本語の音相」および「ネーミングの極意」
をお分けします。
  赤ちゃんの最良の名前を選びます
・・・人の性格は、名前の音で決まります

≪ネーミング批評(1)≫ 

「ペプシコーラ」
・・・すぐれた音相感覚と、難音感の巧みな利用

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ペプシコーラ

表情欄をみると、最高ポイントに「明るさ、爽やかさ」を置き、「活性的、現代的、躍動感、若さ、庶民性、軽やかさ、明るさ、現実的、新奇さ」をそれに加えて清涼飲料にふさわしい雰囲気を持つ語であることがわかります。

また表情語のポイント数を全体的に高めたため、若者風の溌剌感が強調された語になっています。

表情語のポイント数を高めると、穏やかさや情緒感など「静」(または陰)のイメージが弱まる代わりに、活性感や派手さ、若さなど「動」(または陽)のイメージをもつ語になるのです。

またこの語の優れたところは、難音感(言いにくさ)を利用してオノマトペ(擬声)効果をあげていることです。

「特記事項」欄をみると、この語には「難音感」があると出ています。それは半濁音を2連続(ペプ)させたため起こったものです。

ことばに言いにくい箇所があると音の流れがギクシャクするため、難音感はなるべく避ける方がよいのですが、この語ではそのぎこちなさを使って口の中で炭酸がはじける「プチプチ感」を見事に表現しているのです。

同種の炭酸飲料「コカコーラ」にも同じような難音感の工夫がされています。

この語の難音感は、破裂音を3連続(コカコ)させて起こったものですが、息を喉で破裂させて出す喉頭破裂音(コカコ)よりも、唇で破裂させる両唇破裂音(ペプ)の方が、あのプチプチ感がより実感的に伝わってくるのです。

どちらも高度な音相感覚を意識した優れたネーミングですが、ペプシコーラにはさらなる一と工夫が見られるのです。

≪ネーミング批評(2)≫ 

TSUBAKI(ツバキ)資生堂
・・・華やぎが過ぎて情緒が消えた

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ツバキ

「清らか、爽やか」をトップに置き、さらに「暖かさ、シンプル感、個性的、庶民的、若さ、高級感、都会感」などを加えて、女性化粧品らしいムードを捉えていますが、この語には次のような問題点が気になります。

それは表情語欄に高ポイントの表情語があまりに多く出ているため、それぞれが声高にぶつかりあって、落ち着きのない語になっていることです。

ホームページで商品コンセプトを見てみたら、「この商品は日本女性の美意識をとらえ、女性の髪の魅力を最大限引きだすために生まれました」とありますが、表情解析欄の青色の棒グラフ(注参照)が示しているように情緒や美的環境をつくる薄青色の表情語 「静的(T)」、「安定感(Q)」、「優雅さ(S)」の値が低く、情緒解析欄にもその種の情緒語が出ていないため、この語の音から「日本女性の美意識」のイメージが聞こえてこないのです。

そういう音相になった原因は、無声音と高勁輝拍(BとH値の高い拍)の使いすぎにあることを「有効音相基欄」が示しています。

標準的な無声音の使用割合は拍数の47%ですがこの語は67%、高勁輝拍は標準が拍数比24%なのにこの語では67%と格段に高いのです。

音相分析を行うと、多くの人が何となく感じる違和感を、その根拠とともに明白に示してくれるのです。

(注)青い棒グラフの読み方

表情解析欄にある青色の棒グラフ、「濃い青」、「薄い青」、「中間の青」は、イメージの方向性を見るために設けたものですが、次のような違いを示すものです。
濃い青 ・・・ 「活力感、若さ、シンプル感、現代感」など、明るさや活性感など陽(プラス)の方向を向く表情語。
淡い青 ・・・ 「高級、優雅、落ち着き、安定感」など、複雑で非活性的な陰(マイナス)の方向を向く表情語。
中間色 ・・・ プラス、マイナスのどちらにも機能する表情語。

≪ことば批評≫ 

俳句「花散て また閑かなり 園城寺」(鬼貫)
・・・音相分析が捉えた「響き」の真意

上島鬼貫(かみしまおにつら)は、芭蕉と並び称せられた同時代の俳人です。

この句は、満開の桜が散り再び歴史の中へ沈んでゆく古寺の風情を詠んだ句ですが、古寺にただよう永遠感と、暗く重たい「おんじょーじ」という音の響きの共鳴が、この句の深さをそこはかとなく伝えてくるのを感じます。

園城寺が、もし建長寺や浅草寺だったらどんな句になるだろうか。そういう思いも手伝って、これらの3語を分析してみました。

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けんちょーじ
せんそーじ
おんじょーじ

はじめに、これらの語がもつイメージの違いを明らかにするため、「有効音相基欄」の違いの部分を取出してみました。

けんちょーじ ・・・ プラス輝性語。無声破裂音と無声拗音が多い。
せんそーじ ・・・ マイナス輝性語。調音種比が高く、摩擦音が多い。
おんじょーじ ・・・ マイナス輝性語。オ列音と有声破裂音が多い。

古寺にみられる幽玄さや永遠感を表すには、それにふさわしいイメージを作る音が入った語でなければなりません。

そのため、無声破裂音と無声拗音でできた明るいイメージ(プラス輝性語)の「けんちょーじ」はこの句の場合はふさわしくありません。

そこで、宗教的な雰囲気をもつマイナス輝性語でできた「せんそーじ」と「おんじょーじ」の比較となります。

両語を見ると、「せんそーじ」は高調音種比と摩擦音系の音が多い(せ、そ)ため暖かく庶民的ムードを持つ語であるのに対し、「おんじょーじ」は暗く重たいオ列音が多く、幽玄的ムードを作る有声破裂音系が2音(じょ、じ)もあるため、「浅草寺」よりも永遠感を詠むにふさわしい語であることがわかるのです。

松尾芭蕉は句論の中で、ことばが伝える「響き」の大切さを説いています。

芭蕉の説く響きの意味を音相論的に捉えると、鬼貫が永遠感をイメージさせるのに「おんじょーじ」という音を選んだように、響きとは句のこころと響きあう音を持つ語を取出す「才華」のことだと思うのです。

≪ことばの音相≫ 

イメージ(表情)はどんな方法で捉えたか

綺麗なことば、明るいことばなどと言われるように、ことば(単語)は1つ1つ個有のイメージを伝える働きをしていますが、ことばが持っているイメージを追ってゆくと「明るさと暗さ」(+Bと-B)と「強さと弱さ」(H)の組合せでできていることがわかります。

すなわち、ことばのイメージは次の6種類に分けられます。

(注・・・BはBrightness、HはHardnessの略)

1. 明るく、強い表情 (+B H)
2. 明るいが、強くない表情 (+B 非H)
3. 暗く、強い表情 (-B H)
4. 暗いが、強くない表情 (-B 非H)
5. 明暗いずれでもないが、強い表情 (±B0 H)
6. 明暗いずれでもなく、強くもない表情 (±B0 非H)

次に表情を具体的に捉えるため、国語辞典から感情の含まれるすべての単語(1,289語・・・音読み語を除く)を取り出して、それらを意味によって上の6種に分けたうえ、それぞれの中で使われている音素の種類と、その使用頻度(量)を捉えます。(これが「音素と音価表」の「BとH」の数値です。)

(注)「音素と音価表」は「日本語の音相」107ページ参照。

「音素と音価表」を用いると音の単位である「音素」は次のような表記が可能となります。

(例)
音素   音素(子音)の構造 表情の方向と量
t(タ行の子音) ・・・ 前舌音×破裂音×無声音 +B1.4 H1.5
g(ガ行の子音) ・・・ 喉頭音×破裂音×有声音 -B2.0 H1.0
a(母音「ア」) ・・・ 有声音     B0 H0
o(母音「オ」) ・・・ 有声音 -B0.7 H0,0

またこの式から音節(拍)「タ」や「ゴ」は次のように表記ができます。

タ= t + a = t (+B1.4 H1.5)+a (B0.0 H0.0)= (+B1.4 H1.5)
ゴ= g + o =g (-B2.0 H1.0)+o (-B0.7 H0.0)=(-B2.7 H1.0)

ことばの表情(イメージ)は、これらを元に、次の順序で捉えてゆきます。

まず音素その他、ことばに表情をつくる最小単位である「音相基」を捉えます。

音相基には40種のものがあり、それぞれ種々の表情をもっています。

音相基が持つ表情を甲類表情といいます。

甲類表情に出ている表情は、平均的感性を持つ日本人がその音を聞いて無意識的に感じるイメージの幅を示したものですが、それはことばの音の良しあしや好き嫌いを決める元にもなるものです。

次に、甲類表情相互の響き合いから生まれる「乙類表情」を捉え、さらに「表情語」同士の響きあいから生まれる「情緒」を捉えたうえ、これらを総合判断して初めてその語の表情が捉えられるのです。

(これら作業の詳細は「日本語の音相」第2部、音相理論の体系」を参照してください)

音相システム研究所が行なっている業務

当研究所では、次の業務を行なっています。

1. ことばの科学が対照としてこなかった「実用されていることば」(商品等のネーミングを含む)が人に伝えるイメージ(表情)を客観的な根拠をもとに解析し評価する種々のプロジェクト。
2. 企業等が保有している大量のネーミングや未発表のネーミング案の中から商品コンセプトに最適の語を、根拠とともに抽出するプロジェクト。
3. 学術用語、業界用語、俗語、外来語その他、あらゆることばが伝える「イメージ」に関する調査および論評、提案等のプロジェクト。
4. 詩、俳句、小説など文芸作品に含まれるキーワード(主要語彙、フレーズ)などの音相を分析し、作者の創作意図や心象などを解析するプロジェクト。
5. 人の姓名の音相を分析して基本性格や心性等を解析するほか、新生児に期待したい性格を入力して、適切な名前を取出すなどのプロジェクト。
6. その他、ことばが伝えるイメージについての分析、論評およびコンサルティングの業務。

「音相」の語源について

平安時代のはじめ、遣唐使として唐に渡っていた空海(弘法大使)が帰国して真言宗(真言陀羅尼宗)を開きました。

真言宗は文字で表現できない深層の世界、実相の世界を説く教えですが、空海の著作に「声字実相義」(しょうじじっそうぎ、819年)というのがあります。

「声発して虚(むな)しからず、必らず物の名を表するを号して字という。名は必らず体を招く。これを実相と名づく…」 など、ことばと事物がもつ実体は合一のものとする「言事融即」(げんじゆうそく)の教えを説いたものです。

声字とは記号的理解の上で用いられることばでなく、異次元の宇宙的存在エネルギーとしてのことばを指すもので、事物がもつ本然の相(すがた…実相)は、音声言語(話しことば)で代表される「声字」によって開示されると説いています。

「音相」は、そのようなことばの中から生まれたことばです。

ネーミングの「分析・評価」を行います。

当研究所では、次のようなネーミングの分析および評価を行なっています。

(1) 個別評価 ・・・  ネーミングやネーミング案について、本サイトの「ネーミング批評」欄にあるような方法で細密分析と評価を行なうもの。
 分析に当たっては、発注元のご意向などを十分斟酌しながら作業を進めます。
(2) 総合評価 ・・・  大量のネーミング案の中から優良案を短時間で取り出すもの。
 あらかじめその商品のコンセプトをコンピューターに入力し、大量案を入力して、個々の案のコンセプト表現度を捉えたうえ、上位案を前記(1)の「個別評価」で分析して最優良案を推薦するもの。
音相分析と評価の料金表(消費税別)
(1) 個別評価(本評価)
  1語(1分析) 30,000円
(2) ラフ評価
(注) 「ラフ評価」は総語数20語以上で、本評価語数3語以上の場合に行ないます。
・ラフ分析料 50語まで 1語 2,000円
  100語まで 1語 1,800円
  1,000語まで 1語 1,200円
  1,000語以上 1語 800円
・コンセプト調整費     70,000円
・本評価料   1語 30,000円

音相理論の集大成書
「日本語の音相」および、「ネーミングの極意」をお分けします。

「日本語の音相」(木通隆行著、小学館スクウェア刊、)および「ネーミングの極意」(同著、筑摩新書刊)はともに絶版となっていますが、当研究所にいくらか余部があるのでお分けいたします。本書の内容はこちら

郵便番号、住所、氏名、電話番号、冊数、誌名」をご連絡(こちら)いただけば郵便小包でお送りします。

頒布価額(送料とも) ・・・ 「日本語の音相」 2,850円
  「ネーミングの極意」 1,000円

【読者の感想】

●詩歌の音楽性を明らかにした画期的快著

日本の伝統的詩歌において不毛だった音楽性の重要さを解明された画期的な研究です。俳句の実作者としても、深く琴線に触れるものがありました。

短歌や俳句の音韻面については、折口信夫の『言語情調論』などはあってもまだ不十分で、「調べ」という曖昧な概念から抜け出ておりません。先生の「音相理論」はそれを闡明されたものと考えます。

「俳句スクエア」代表、五島篁風 (医師)

●音相という素晴らしい世界を知りました

「日本語の音相」、深い感動をもって読みました。

音相を知らずに日本語の鑑賞や評論などできないことをしみじみ知りました。目の覚めるような感動でした。

(富山、日本語研究グループ hirai)

赤ちゃんの最良の名前を選びます
・・・人の性格は、名前の音で決まります

「けんいち(健一)」という名前を聞くと、誰もが明るく行動的な人を想像し、「みさき(美咲)」という名には爽やかで活発な人をイメージします。

人は同じ名前を呼ばれて育つうち、名前の音が伝えるイメージ(音相)がその子自身のイメージとなり、その子の雰囲気となり、それが性格の中に入ってゆくのは極めて自然な現象といってよいでしょう。

「名は体をあらわす」という古いことばも、そんなところから生まれたことばなのです。

人の性格はその後の環境などにより種々のものが加わりますが、幼少のころ身につけた性格は基本的な「気質」となって、何時までも心の奥に止まり続けるものなのです。

そのため、大成した政治家の名前の音を分析すると、「活性的」、「社交的」、「明るい性格」などの項目がほぼ例外なく高点で出ますし、芸能人の場合は「派手」、「社交的」、「個性的」などに高点の出る人が多いのです。

このように、名前の音は人の一生を方向ずけますから、生まれてくる赤ちゃんを「健康で社交的な性格の人になってほしい」と思ったら、そういうイメージを作る音で名前をつけてあげねばならないのです。

名付けにあたっては、字画などで運勢面を見ることも大事ですが、優れた性格になる名前をつけてあげるのは、ご両親が赤ちゃんに贈るこの上ないプレゼントだといえるのです。

当研究所では、幾つかのお名前案と、こういう性格の人になってほしいという願い(コンセプト)をお知らせていただくと、それに叶ったお名前案を選んでお知らせいたします。

1. 知らせていただく事項
  (1) 赤ちゃんの男女別
  (2) 赤ちゃんにつく苗字
  (3) 候補に上っているお名前案(数に制限はありませんが、必ず案をお示しください。)
 (注)(2)項と(3)項は、「いとう」は「いとー」、「たろう」は「たろー」のように、発音どおりに仮名書きしてください。
  (4) 赤ちゃんに期待される性格
 3~6項目程度に絞り、なるべく箇条書きしてください。
  (5) お申込者の郵便番号、住所、氏名、電話番号
2. このホームページの「お問い合わせ」欄から。
3. 評価結果は1週間以内に、郵便でお送りします。
4. 分析料 1分析(消費税別) 3,500円 
(お名前案が3案あるときは3分析となります。)
送金は報告書に同封する振替口座用紙をご利用ください。
ネーミングの分析・評価を行います