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2008年11月の記事一覧

ネーミング批評(1) 「若者」を音が見事に表現した
「SPA!」(扶桑社)
ネーミング批評(2) 三井住友(銀行)
・・・見事に捉えた「銀行」ムード
ネーミングの極意 音相理論はなぜ日本語から生まれたのか
  音相という語の語源について
  ネーミングの「分析・評価」を行います

≪ネーミング批評(1)≫ 

「若者」を音が見事に表現した 「SPA!」
(扶桑社)

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スパ

若者向けの売れ筋週刊誌の誌名です。

「清らかさ、爽やかさ(N)」をトップにおいたうえ、「現代的(H)」「躍動感(B)」「活性感(D)」「シンプル感(A) など、若者ムードをつくる表情語を高点で捉えた語になっています。

また、わずか2拍という極端な少拍が「ユーモア感や単純さ、現代感」(特記事項欄)を表現し、コンセプト・バリュー欄ではこの語が若者好みの語でできていることを捉えていますが、20種ある表情語のすべてに高イポイントが出ているため、表情のあまりの喧騒さが気品の低さを作っています。

だが、そのような気取りのなさが、若者たちの魅力となっているのも事実といえましょう。

現代の若者の一面を見事に捉えた、優れた作品です。

≪ネーミング批評(2)≫ 

三井住友(銀行)
・・・見事に捉えた「銀行」ムード

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みついすみとも

表情解析欄をみると、「清らか、爽やか」(N)を高点に掲げ、それに「静的、清潔感、暖かさ、信頼感、高級感、軽快感、鋭さ、躍動感、溌剌さ、現代感」(T,P,Q,R,F,L,B,G,H)を配して、銀行ビジネスの優秀性や堅実感が表現されています。

そういうムードを作ったものに逆接拍の多用(7拍中3拍)(注2)と「オ、ウ音の多用」のほか、無声化母音(7拍中3拍)(注1)と「イ」音の多用(7拍中3拍)があげられますが、この語のさらにすぐれたところは、トップの「清らかさ、爽やかさ」のあとの「静的、非活性的」以下のポイント数を低く抑えて表情語がもつ煌(きら)びやかさを圧縮し、語全体に厚みと情緒感を作っていることです。(その奥行感が、複雑度「8」という「超」のつく高点となっているのです。)

銀行業が社名として表現すべきものを見事に捉えたネーミングといってよいでしょう。

(注1) 無声化母音とは・・・
 母音はすべて声帯を振動させて出す有声音ですが、母音「イ」または「ウ」が無声音の間に入ると、声帯を振動させずに出す無声音の発音になるのです。
 そのような母音を無声化母音といいます。無声化母音は軽やかさ、明るさ、モダンさなどの表情を作ります。
(注2) 逆接拍とは・・・
 子音と母音の明るさがプラス(明)とマイナス(暗)の反対方向を向く拍(音節)をいいます。逆接拍は語に奥行き感や優雅さを作ります。

≪ネーミングの極意・シリーズ≫ 

音相理論はなぜ日本語から生まれたのか

ことばの音が作るイメージ(表情)を数量的に説き明かすという、世界的にも未踏な音相論の研究が、なぜ日本語で立論できたのか。

その理由として、私は次の2つをあげています。

 

(1)日本語が他言語の影響をほとんどうけていない言語であったこと。

日本は有史以前から他国の支配をうけることがなかったため、日本語の祖語「やまとことば」(和語)は、統辞構造(ことばの順序)や文法、音韻など、言語の基本となる「核」の部分に外国語の影響をうけることがありませんでした。

最近のカタカナ外国語の乱用ぶりなどをみていると、日本語は外国語の影響を大きく受けているように見えますが、外来の語は日本語の「名詞」(語彙)の数を増やしただけで、言語の基本部分への影響はまったくないといえるのです。

たとえば「華麗」や「Romantic」という語が入ってきた場合、日本人はこれらの語のあとに「だろ、だっ、で、に、な、なら」という形容動詞の定形の活用をつけて使います。

すなわち、原語である「華麗」や「Romantic」は形容動詞の語幹、すなわち「名詞」の役割として受け入れてるにすぎないのです。 そのため、わが国では「外来語が増える」ということは新たな語彙が増え、日本語の表現が豊かになるプラスの面はあっても、日本語の言語体系が乱されることはなかったのです。

このような考えや手法は、音韻の受け入れの際にも同ようでした。 「京」(チン)や「北」「ピエー」という中国風の音韻はやまとことばの音韻にはなじまないため、「チン」は「キョー」、「ピエー」は「ホク」と読み替え、西欧語の「Centiment」(センティメントゥ)は「センチメント」、「Digital」(ディジタル)は「デジタル」と、やまとことば風の音韻に翻案しながら受け入れています。

このように日本語は、先人たちのすぐれた知恵で、その純粋性が守られてきたのです。

 

(2)日本語の音節(拍)数が適宜な数であったこと。

音相理論が、日本語ではじめて開発できたいま1つの理由として、音相を捉える単位となる音節(拍)数が日本語の場合適切な数であったことがあげられます。

日本語は子音のあとに母音をともなう開音節の言語であったため、拍を単位に音を認識することが容易ですが、子音で終わる音節が多い閉音節の言語では、音節の区切り方に規則性がなく、そのため音相の把握に必要な「音の単位」が不明確になります。

日本語の拍(音節)の数は「アイウエオ」の50音のほか、拗音、濁音、半濁音など合計138個にすぎませんが、英語の場合は音節(Syrable)の区切り方が学者によって「1,800」、「3,000以上」、「10,000以上」などとまちまちです。

表情をとらえる音の単位が1,800以上にもなると、人の脳内でのイメージの識別機能が限界を越え、個々の音節のイメージ把握は困難となります。

日本語ではすべての音を138という手頃な数で表現できるところに、音相という概念の認識が生まれ、イメージ解析の手法が得られたように思うのです。

音相という語の語源について

遣唐使として唐に渡っていた空海は、平安時代のはじめ(大同元年…806年)に帰国して真言宗(真言陀羅尼宗)を開きました。

真言宗は、文字で表現できない深層の世界、実相の世界を究めようとする教えですが、その著作の中に「声字実相義」(しょうじじっそうぎ、819年)というのがあります。

「声発して虚(むな)しからず、必らず物の名を表するを号して字という。名は必らず体を招く。これを実相と名づく…」

など、言葉と事物の実体とは合一のものという「言事融即」(げんじゆうそく)の教えを説いたものです。

声字とは、記号的言語ではなく、異次元の宇宙的存在エネルギーとしてのことばを指すもので、事物がもつ本当の相(すがた…実相)は、音声言語(話しことば)で代表される声字によって開示されると説いています。

「音相」という言葉は、このような学びの過程から生まれたものですが、色彩学に、色を成り立たせている要素に「明度」(明るさ)、「彩度」(鮮やかさ)、「色相」(色のすがた、いろあい)の分類法があることも参考にしました。

ネーミングの「分析・評価」を行います

音相システム研究所では、「ネーミング批評」欄に出ているようなネーミングの分析と評価を行なっています。

分析評価の種類には次のものがあります。

(1) 個別評価 ・・・ トップページの「ネーミング批評」欄にあるような細密分析を1語ごとにおこなって、イメージ的な良否の判断やその根拠の説明、対応策などを述べるもの。
(2) ラフ評価 ・・・ 大量のネーミング案から優良案を短時間で取り出すもの。あらかじめ商品コンセプトをコンピューターに入力し、それに大量案を入力して個々の案のコンセプト達成率を捉えたうえ、高点にある少数案を前記(1)の「個別評価」で細密分析して優良作を提案するもの。
音相分析と評価の料金表
(1) 個別評価(本評価)
  1語(1分析) 30,000円
(2) ラフ評価
・ラフ分析料 50語まで 1語 2,000円
  100語まで 1語 1,800円
  1,000語まで 1語 1,200円
  1,000語以上 1語 800円
・コンセプト調整費     70,000円
・本評価料   1語 30,000円
(注) 「ラフ評価」は総語数20語以上で、本評価語数5語以上の場合に行ないます。
ネーミングの分析・評価を行います